人生見切り発車

永遠にみつからない自分探しの旅(仮)

過去の見切り発車 海外放浪 1人旅 26 ベトナム編《フエ カジノでルーレットに溺れる ②》

 

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見切り発車、ブログを書きながら自分の中毒ぶりに若干ひく の巻


クレジットカードを黒服の従業員に

わたし、100ドルと画面に表示された

ところで、トイレに立った。

 

用をたし、洗面台で顔を洗う。

そのあと、ビールと煙草を無料でもらった。

一泊千円しない宿を転々とするような生活を

しながら、すでに200ドル近く財布から

消えている。

だが、そのとき僕を包んでいたのは、後悔

ではなく、高揚感だった。

 

これだ、このスリルだ。。。

(↑ 我ながら完全に末期の中毒者。。。)

 

ルーレットの席に戻り、賭け金を20

から25ドルに増やした。

3回連続であたり、175ドルになった。

 

いける。。。

 

そう思えたのは、ほんの数分だった。

まるで上り坂を超えたジェットコースター

のように、一瞬ついていたと思えた時とは

比べ物にならないスピードで、落ちていく。

 

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僕を狂わすルーレット

 

200、

300、

250ドル。。。

 

次々とレシートにサインをしていく。

不思議なことに、新たに入金した時は

たいがいしばらく調子がいい。

3回くらい連続で当たるのだ。

しかし、そのあとはまるで、

ルーチン化してるかのように

毎回転げ落ちていく。

 

負けた金額が700ドルを超えたとき、

何か作為的なものを感じた。

プロのディーラーは、ルーレットで

狙った玉を狙える、という話は

よく耳にする。それが機械なら、もっと

たやすいだろう。

 

だが、僕は止まらない。

止めることができない。いつものことだ。

 

重度のアルコール中毒者が、気を失うまで

飲み続けるように、僕は電子ルーレットに

金を賭け続ける。

 

そこにはすべてを超越した陶酔感がある。

底からつきあげるような自己嫌悪と、

それを嘲笑う自分に酔っている。

 

ゲートを飛び出した競走馬のように、

ゴールを駆け抜けるか、落馬して競争中止

となるか、どちらかの選択肢しかない。

 

とは思いつつも、さすがに1000ドルを

使ったらやめよう、と思ってはいた。

(もちろんカジノに入ったときは20ドル

でやめようと思っていた。いかに狂っている

かがよくわかる)

 

さすがに全財産を投げ打つ覚悟はない。

僕はベトナムに、カジノをしにきたわけでは

ないのだ。

 

残高がついに100ドルになった。

これが負ければ、1000ドル負け確定。

僕は100ドルを賭け、台から吐き出される

白球に目を凝らしながら、黒、黒とまるで

呪詛のように心の中で叫んだ。

 

身を乗り出そうとかがんだせいで、左手が

自分の胸にあたり、自分の心臓が張り裂けん

ばかりに鼓動していることにきづく。

 

発射台から飛び出した白球は、まるで、

動くステージで踊っているかのようだ。

 

僕は思わず立ち上がり、食い入るように

白球の行方を見守る。

 

玉は跳ねる。

回る、

踊る。

まるでそれ自体が、意志を持っているかの

ように僕の瞳にはうつっていた。

白球が、悪魔の使いのようにさえ、

みえてくる。

 

やがて、白球は2番(黒)のポケットに

吸い込まれる。

 

黒。。。

やった。。。

 

そう思い、安どのため息をついたが、

クレジット残高は増えていないことに

僕はきづいた。

当たったときに聞こえる

「カッホウ」

というスピーカー音も聞こえない。

 

僕は、自分が黒ではなく、ODD(奇数)

に賭けていたことにきづいた。

長時間ギャンブルをやっていると、

時折自分が賭けていたものを忘れる

ことがある。

わずか1分にも満たない勝負を、

何時間も何時間も、永遠とやっている

とこういうことがある。

 

僕は茫然自失としながら、残高に0と

表示された自分の台をしばらく

みつめていた。