人生見切り発車

永遠にみつからない自分探しの旅(仮)

過去の見切り発車 海外放浪 一人旅 7 中国編《マックで中国人とシェイクを飲む》

 

 

 

 

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中国のマックで廃人が人生を語りだすの巻


もう夜十時になっていたが、
玉さんと、玉さんの友達という、モウさんと三人で

ホテル近くのマックに行った。

 

僕は二人にマックシェイクをおごってあげた。

たかだかマックのシェイク、と思うかもしれないが、

中国ではマックは全然安くない。

マックのセットメニューは30元はするが、

市街の食堂なら20元もだせばそれなりの食事ができる。

 

モウさんは高卒の19歳で、来年4月から日本にきて、

2年間専門学校に通いながら日本の大学の学費を貯める予定らしい。

両親は1年分の学費を出してくれるそうだ。

 

がんばれば大丈夫、と玉さんがいうが、

僕はそうは思えず、残酷とは思ったが正直に自分の考えを言った。

 

働きながら日本語学校に通い、生活費も学費を稼いで

大学に行くなんて、無理だ。

いや、不可能ではないかもしれないが、

それこそ泥水をすすってでもはいつくばってでも

やる覚悟が必要だ。

 

行けばなんとかなるわけでもないし、

日本は「ジャパニーズドリーム」なんかではない。

 

それに、今の日本語学校の先生がよくないというが、

日本に所在する日本語学校の先生もよくなかったら

どうするんだ。

苦労も厭わず、日本に行く覚悟があるのならば、

今から真剣に寝る間も惜しんで日本語を勉強すべきだ。

日本に行って、バイトをしながらでは勉強どころではない。

今、できないものを日本に行ったからできるように

なるわけがない。。。

 

熱く熱弁をふるいながら、僕の心の中では、もう一人の

自分が、自分自身を嘲笑っていた。

 

このコは「日本」という甘い幻想を見ているのかもしれないが、

今も語学学校に行って、毎日一生懸命日本語を勉強している。

 

それに比べて、偉そうに説教を

たれている、お前は一体何なんだ?

 

働きもせず、ろくな貯金もないくせに、目的のない旅を

しているお前に、他人に何がいえるのだ??

小説家になりたい、などと熱病に犯された廃人のうわ言の

ように繰り返しているが、そのためにお前はいったい、

何を努力しているというのだ。

机を前にして、何も書けないというが、それなら机に

かじりついてでも、血反吐を吐いてでも、

文字をしぼりだせばいいだけではないか。

 

お前が説教できる相手など、この世に存在なんかしない。

 

マックには3時間近くいた。

帰り際に、僕はモウさんにメールアドレスを渡して、

日本について、何か聞きたいことがあればなんでも

聞いてくれと伝えた。

モウさんは嬉しそうに、シェーシェー(ありがとう)

といってくれた。

なんて純粋なコだろう、と僕は思った。

日本に来て、傷つくようなことがなければいいが。。。

 

ホテルまでの帰り道、玉さんはいった。

「日本に行きたい生徒はたくさんいるの。

 中国には、いい仕事がないから。。。」

そういうものなのだろうか、と僕は小さくうなずきながら

考えていた。これだけ都市も発展しているのに、

いい仕事がないとは、どういうことだろう。

 

12時過ぎ、街灯も消えかかった路上で、バイクに

またがった男が、エンジンもかけずに路上をみつめていた。

 

あれはバイクタクシーよ、と玉さんはいう。

家族を養うため、5~6元の稼ぎのために、ああやって

客待ちをしているらしい。

 

玉さんが、ぼそっとつぶやくように言った。

「学歴がなければ、何もできないわ」

その言葉は、40歳手前くらいだろう玉さんが、自分自身に

向かってつぶやいているように、僕には思えた。