人生見切り発車

永遠にみつからない自分探しの旅(仮)

過去の見切り発車 海外放浪 1人旅 114 ラオス編 《ラオス国境でのトラブル 後日譚》

いざ! ワットプーへ

 

自転車を借りて、ホセとでこぼこだらけの

アスファルトを疾走する。

いや、正確には疾走しているのは

ホセだけで、とんでもないスピードだ。

 

彼はTシャツを脱ぎ、スペインの猛牛の

ごとく突進していく。

 

かんべんしてくれ。。。と全身に疲労

たまりまくっている僕は、泣き言を

いいたくなる。

僕は二日前、Donkong という島を自転車で

走ったが、後で聞いたところによると

島一周で40kmあるらしく、

道に迷ったり、道草したりしていた僕は

50km以上は走ったことになるのだ。

 

8kmの道を30分くらいかけて、

ワットプーの入り口に辿り着いた。

 

入場料を払い、遺跡がある方向に歩きながら

ホセが言った。

「そういえば、ビザがなくてラオス

入れなかった二人組がいただろ、僕は

Dondet でたまたま彼らに会ったんだ」

 

じゃあ、ビザをとれたんだね、と僕は

返す。

 

彼らは確かギリシャ人で、ラオスに入国

するにはビザが必要とかで、足止めを

くらったはずだ。

日本国の最強パスポートを保持してた

僕は、ノービザで入国できた。

 

過去の関連記事でございます ↓

jinsei-mikiri-hassya.hatenablog.com

 

 

jinsei-mikiri-hassya.hatenablog.com

 

 

 

「Stung Sten という町に戻って、そこ

でビザがとれたらしい」

「それはよかった」

一緒のバスに乗っているのに、

ビザなしで通れたことに若干の

うしろめたさを感じていた僕は、

素直に喜んだ。

 

ホセが、その時のことを思い出したのか、

若干真面目な顔で、

「それにしても、ラオス国境で2ドル

払わされたのはむかついたね。

オレは汚職は嫌いなんだ」

といって眉間にしわを寄せた。

ホセは確か、この2ドルで国境検査官と

おおもめにもめたはずだ。

 

僕はそのホセのセリフを聞いて、

ホセに、そして一緒にいた外国人達の

全員に、ぶつけたかったことを言った。

「でもさあ、彼らが間違っていたとは

限らないんじゃないか。休日に国境を

開けることに対し、特別料金を徴収する

のも、2ドルといちいち掲示してないの

も、ただこの国の文化がそうさせている

のかもしれないじゃないか。

確かに、僕にも彼らが汚職していたのか

どうか、2ドルが正当だったのかは、

わからない。だけど、そういったことは

何もかも明記してはっきりしてなきゃ

いけない、自分たちは絶対に正しい、

って頭ごなしに決めつける

なんて、白人の習慣にすぎないん

じゃないか」

 

僕は、ホセが何か反論してくるものと

みがまえた。

なんせ、ホセはこの国境検査官と30分

以上もめていて、そうとう嫌な目にあった

はずだからだ。

 

しかし彼は一瞬考えるようなそぶりをみせて、

あっさりと、

「確かに、君のいうことは正しいのかも

しれない。確かに」

と言い、頷いた。

 

この反応に、僕は正直、驚いた。

 

ただ単にくだらない口論をしたくなかった

のかもしれないが、その素直な反応は、

6歳も年下のアジアの若造に対するもの

としては、驚きに値した。

 

あんだけ嫌な目にあった話をして、

話した相手が共感することもなく、

逆に「いや、間違っているのはお前の

ほうだ」

なんて言われてたら、普通の人間なら

キレるだろう。

 

でも、僕は言わずにはいられなかった。

この旅をしていて、

欧米人や、日本人たちが、自分たちの

スタンダードで、東南アジアの人間に

対し、こういうところがおかしい!

と目を吊り上げて、

さも自分は正しい!と叫んでいる

ようなヒトをたくさんみてきて、

正直僕はうんざりしていたのだ。

 

でも、ホセは、怒ることなく、

自分とは、全く正反対の僕の意見に

たいし、聞き流すことなく、

「確かにそうかもしれないね」

と返してくれた。

 

それって、すごいことだ、と僕は思う。

 

僕はホセという人間が、またひとつ

好きになった。