人生見切り発車

永遠にみつからない自分探しの旅(仮)

過去の見切り発車 海外放浪 1人旅 107 ラオス編 《ホセとの別れ》

翌日、ニワトリの声で目をさます。

思いのほか寒く、鼻水をすする。

竹を編んで作ったバンガローなだけ

あって、隙間風がすごいせいだろうか。

 

父親の夢を見たようだ。

もうすぐ、ガンの検査が終わる頃

だからかもしれない。

 

父親はずっと痔に悩まされていたが、

それが痔ではなく、違う疾病、、、

つまりガンだった可能性がある。

 

時計を見ると、6時だ。

ドアを開けて外へ出ると、

太陽が肥沃なメコン川の先の先で、

今まさにのぼらんとしていた。

 

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水彩画にしたらいかにも映えそう

な風景に、僕はしばらく阿呆の

ように、ぼんやりとその光景に

のみこまれていた。

 

7時くらいになってようやく

オープンしたバスの案内所で、

Don Knong に行くにはいくらで、

何時くらいのバス(あるいはボート)

なのか聞いてみた。

 

11時に出発の1便しかないらしく、

他で行くなら20ドルの

チャーターでいくしかないという。

 

11時の便は60,000ラオスキープ

(だいたい500円)で、

物価を考えると決して安くはないが、

他の案内所では20万キープと

ありえない金額を提示された。

 

多くのツーリストインフォ、つまり

案内所がまだ開いていない。

しかも、6万キープで便があるという

案内所はまだ開いたばかりなのに、

8時に閉まるという。

(どういうシステムだ?!)

 

メコン川流域の、こんないい場所に

1泊でいいのだろうか。。。

それにホセという愉快なスペイン人

の友達もできた。

彼とならお互いのペースをみださず、

短期間といえども色々と一緒に

観光できるかもしれない。。。

 

荷物をまとめ、チェックアウトを

すませた後も、優柔不断な僕は

まだ迷っていた。

 

案内所が閉まる8時まで、もう

15分くらいしかない。

隣のバンガローにいたホセに、

どうしよう、まだ迷っているんだけど、

と知り合ったばかりの友人である

彼に、馬鹿みたいに聞いてみる。

 

ホセは言った。

ドンコンはよさそうなところだ、

自分もしばらくしたら行くつもりだ、

と。

 

僕がもうすぐDondet を発つかも

しれないというと、

ホセはとても残念そうな顔を

したが、無理にひきとめようとは

しない。

 

彼もまた、旅人なのだ。

 

ホセとメールアドレスを交換して、

結局11時のボートに乗った。

 

メコン川は相変わらず穏やかで、

あくせく生きている人間を

暖かく見守っているかのようだ。

 

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僕の後ろで、ボートに乗っている

4人の白人の若者たちが、

ビバ!カンボジア

と叫んでいる。

とても楽しそうだが、

何故か友人同士で楽しそうにして

いる彼らが羨ましいという

気持ちはあまり起きなかった。

 

ひょっとして、僕はいつも

company (同伴者)

を求めていながら、

内心はひとりぼっちで

旅をしていたいのかもしれない、

とも思う。

 

昔からひとにあわせるのが

苦手な性格だった。

 

かっこよくいえば

一匹狼だが、

その実、

木陰にうずくまり、

時折吠えてみせることが

関の山の、

牙の欠けた狼だった気もする。

 

ひょっとしたらホセ自身も、

僕が今日旅立つと聞いて、

残念な気持ちも本心だっただろうが、

内心では少しほっとしている気持ち

もあったのかもしれない。

 

別れは確かにさみしいが、

かといって他人に拘束されるのも

億劫だ。

 

一人旅をしている人間の性質

みたいなものなのか、

それとも僕みたいなのは

少数派なのか。。。

 

こんな不器用な僕は、

はたしてまともな仕事に、社会に

戻れるのだろうか。