人生見切り発車

永遠にみつからない自分探しの旅(仮)

過去の見切り発車 海外放浪 1人旅 110 ラオス編 《メコン川の流れに身をよせて》

 

メコン川

 

翌日、ボートツアーに参加することにした。

8:30~17:00の1日ツアーで、10ドル。

1000円くらい。

日本でいえば、十倍くらいかかるかも

しれない。

 

昨日、顔見知りとなった南アフリカから

きたという白人夫婦も参加していて、

旦那さんの方は、僕が今後は北に

向かって旅するつもりだと知るや否や、

子供のように青い瞳を輝かせながら、

この町についたらこのホテルに泊まれ、

とかここに寄れ、だとか説明しながら、

地図や写真をみせてくれる。

この初老の旦那は、相当、他人との

会話に飢えているのか、

流水に屹立する樹木を指し、あれは

乾季のときは、どういう状態で~

などとガイドみたいなことも話し出す。

 

奥さんの方は、いつものことね、と

でも思っているのか、我関せずと

いった感じで、メコン川の緩やかな

水の流れを視線を泳がしている。

 

僕となんかじゃなくて、奥さんと

会話をしなくていいのか、コイツ、

と僕は内心苦笑する。

微笑ましい夫婦だな、と思った。

 

やがて話疲れたのか、話題が尽きたのか

旦那さんが静かになると、僕はメコン川

流れに目をよせる。

 

巨大な湖のように穏やかなメコン川は、

途方もなく大きくて、悠久という言葉が

そのまま当てはまりそうなくらい、

ゆるぎない。

 

そういえば、僕はベトナム下流から

(途中寄り道したものの)

メコン川に沿って、カンボジア

ラオスとのぼってきたことに

いまさらながら気づく。

 

考えてみれば、旅をしてほぼ一カ月が

経過し、12月になっていた。

 

旅を始めた初日、中国の宿で、

どうやってベトナムに向かうんだとか、

言葉の通じない国の電車、しかも

各駅停車で旅なんかできるのか、

などと考えていたあの夜まで、

僕の記憶はさかのぼっていく。

もうあの夜が、何年も前の出来事の

ようにさえ思える。

 

自分はあとどれくらい旅を続けるのか

、続けることができるのか。。。

どこまでいくのか、どこに向かうのか。

 

タイの空港は、デモで封鎖されていると

ニュースで見たが、途中で見知った

旅人の中には陸路なら問題ないという

人もいたし、ヨーロッパ主要政府は

危険だからタイに渡航するな、と

渡航勧告がでているという話も聞いた。

 

正直な話をしてみれば、

空路が断絶されてしまっている国に、

陸路で行く、という支離滅裂な行動に、

えもしれぬ、抗いがたい魅力を

感じてしまっている自分自身がいた。

 

だが、どれくらい危険なのか。

もともとタイという国に行ったことが

なかったため、情勢不安なタイ、と

いわれてもピンとこない。

 

天涯孤独な身なら、中東にだっていける

のかもしれないが、独身とはいえ、

そういうわけにもいかない。。。

 

遠くから、手を振ってくる子供たちが

いる。ラオスに来てから、もう何度も

目にする光景だ。彼らは、舟が見えなく

なるまで、手を振ってくれる。

あるいは、このあたりでは外国人に

サバディーと叫んで手を振るのが、

子供たちの遊びみたいになっているの

かもしれない。

 

そんな子供たちを見るたびに、

心がどこか癒されるのは、

きっと僕だけではないだろう。

 

途中、Dondetをボートがとおりすぎる

とき、僕が泊っていたバンガローに目を

やると、従業員とホセがしゃべっている

のが見えた。

僕が、彼の名前を叫びながら手をふると、

驚いたようにホセも両手で手を振り返し

てくれる。

ホセの姿が見えなくなり、時計を見ると

午前十時を回っていた。

Dondetを出る船は、毎日朝八時だけと

聞いていたから、彼はあの何もない所に

少なくとも三泊するということなの

だろう。

また、彼と会うことはあるのだろうか、

と川の流れに視線を戻しながら、

僕はぼんやりと考えた。