人生見切り発車

永遠にみつからない自分探しの旅(仮)

過去の見切り発車 海外放浪 一人旅 2 中国編《中国到着》

 

 

 

 

 

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広州 市内

 

広州空港へ、到着した。

 

ARRIVAL、到着出口を出ようとする瞬間、一瞬広州の取引先の中国人が出迎えに

いるのではないか、と錯覚した。

サラリーマン時代の記憶。。。

 

仕事で広州に来ていたころは、到着ゲートに取引先の運転手と担当が

いつも待っててくれていて、そのまま車に乗り込んで目的地に直行だった。

 

さて、到着したものの、当然のことながら右も左もわからない。

どうしたものか。。。

僕は、ベトナム周辺の大きな地図しか持っていなかった。

うっかり忘れたわけではない。

沢木耕太郎の「深夜特急」にあこがれてガイドブックに頼らない旅を

したかったせいだ。

いろいろと、青い若造な30手前の僕。

 

とりあえずベトナム方面に行きたいが、どれくらいの距離なのか、

下調べゼロな僕は見当もつかなかった。

 

とりあえず手持ちの地図を見ると、ベトナムハノイの横に南宁という

地名が確認できた。

とりあえず、ここに向かうとしようか。

 

到着出口近くの、Informationと書かれたデスクで聞いてみるとしよう。

日本でもどこにでもいそうなおばさん、といった感じのおばさんが

僕に負けないくらいの拙い英語でいった。

「バスで1時間、720元」

720元?1万円くらいする。バスにしては高すぎやしないか。

どんなリムジンバスやねん。

だが、隣にいた薄ひげを生やした角刈りの兄ちゃんを交えて話を

したところ、バスではなく飛行機で720元、ということだった。

バスで1時間、というのは国内線までバスで1時間ということらしい。

 

南宁までバスか電車で行けないか、と聞くと、

無理無理、遠すぎる、といわれた。

それでも挙動不審な日本人よろしく食い下がると、いけないことはないが

今日はもう夕方だから明日にしろ、といわれた。

 

そこはしぶしぶ了承し(というか下調べゼロの自分が悪いのだが)、

370元という一番安いらしいホテルを紹介してもらった。

(相場もわからない、無知のなせる技。。。)

 

タクシー乗り場に行くと、丸刈りの太っちょに話しかけられた。

「TAXI?」(タクシー?)

YES、と僕はこたえる。

「WHERE?」(どこいくんだ?)

HERE(ここだよ)、といって僕は先ほどもらった市内地図をみせた。

「OK、200 RMB

そういって丸刈りは普通の乗用車に僕をのせようとした。

おいおい、タクシーの運ちゃんじゃないやんけ!

と僕は心の中で毒づいた。

「I will take a Taxi !!」(タクシーに乗るんだ !!)

と無理やり丸刈りから体を引き離すと、またタクシー乗り場で

さっきとは違う、痩せたおじさんに話しかけられた。

地図を見せると、おじさんは歯のかけた笑顔をみせて、

「OK、150 RMB」といって、違う乗用車に乗せようとした。

おお、50元下がった。

じゃなくて、こいつもタクシーの運ちゃんじゃない。

僕が再び、「I will take a Taxi」(タクシーに乗るんだ)というと、

「No No, Taxi, expensive」(タクシー高いあるよ)といって引き下がらない。

 

二人のおじさんの猛烈な勧誘を退け、僕はタクシーをなんとかみつけ、

それにのりこんだ。

 

走り出す車窓を眺めながら、先ほどのやりとりを思い出した僕は、

自分はかっこうのカモなんだ、と実感する。

地図なし、知識なし、中国語もしゃべれない。

 

そういえば、と僕は記憶をたどる。

前の会社で、上司が正月に中国を出張した時の話だ。

(正月に行くくらいだから、結構なクレーム事件だったと思うが

問題が多すぎる相手だったからどのようなクレームだったかは覚えてない)

 

その上司が、空港からタクシーに乗った。

突然の急な訪問のため、相手も車を用意できていなかったのだ。

だが、空港をでて、何時間も何時間も走れども、目的地につかない。

運転手に聞いても、OK、OK、ノープロブレムとしかいわない。

車から見える景色も、見覚えがない。

そうこうしている間に、どこかの民家に到着し、樽のようなものを

運び出す。

そう、彼が乗ったのはどうやらタクシーではなく、

それこそ僕を勧誘してきたおじさん達が運転するような

乗用車だったのだ。

 

結局、彼は携帯電話で取引先に電話し、運転手と話してもらい、

なんとかいつもの倍以上の時間をかけて、目的地の東莞に到着したのだ。

 

誘拐とか詐欺ではなかったようだが、どうやら配送業をやっている

普通のおじさんが、ついでに人も運んでいた、というのが

正解だろう。

 

ただ、乗用車に乗りこんだ彼を責めることはできない。

タクシー乗り場で話しかけられれば、誰だってタクシーだと思うだろう。

少なくとも、日本人ならば。

だが、ここは日本ではないことを、忘れてはならない。

 

ホテルへは、20分くらいでついた。

もちろん、150元よりずっと安い乗車賃で。

 

荷物を置いて、僕は広州市内を歩いてみた。

広州は、賑やかなところなんだな、と僕は感じた。

街並みが、昔の日本はこうだったんだろうな、と思わせる。

僕はタイムスリップしたような感覚をおぼえ、

ああ、旅が始まったのだな、と実感して嬉しくなった。

 

それにしても、二車線の横断歩道は命がけだ。

これだけ交通量が多いのに、信号もないのに、みんなもう信号は青なんだ、

みたいな感じでわたる。

しかも、近づく車もスピードを緩める気配がない。

 

ひかれるほうも、ひいたほうも、自己責任、ということなのだろうか。。。