人生見切り発車

永遠にみつからない自分探しの旅(仮)

過去の見切り発車 海外放浪 一人旅 9 中国編《桂林 路上でひざまずく少女と英語圏の人たち》

 

 

 

 

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桂林いいとこ一度はおいで!



駅員だか旅行会社の営業レディだか最後までわからなかった

おばちゃんに手配してもらったホテルは、

狭いけどいいの?

狭いけどいいの?

と怖いくらい繰り返されたわりには、

日本のビジネスホテルくらいの広さだった。

あんだけ念をおされていたから、てっきり薄暗い牢屋みたい

な部屋かと思っていたが、助かった。

 

ツアーは翌日からなので、僕は桂林の街を歩いた。

桂林は完全に観光地化されていて、どこも景観が素晴らしい。

しかし、もらった地図に記載されているどの公園も

なぜか有料で、25~68元と全然安くない。

 

ある街灯の真下で、頭になぜかハチマキのようなものをまいている、

14歳くらいの少女が、ひざまずいていた。

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ひざまずく少女

 

母親だろうか、白黒の遺影らしき写真を抱え、ぴくりとも

動かない。膝の前には大きな紙に中国語でびっしりと何かが書かれ、

血まみれの写真もあった。

最後の行に、

好心人一生平安!!

と書かれていた。

いったい、このとしはも、いかない少女に何があって、

何を訴えているのだろう。。。

なぜか、その姿がしばらく脳裏に貼りついて離れなかった。

 

翌朝、集合時間といわれた8時にロビーで待っていると、

野球帽のようなものをかぶった女の子がやってきた。

僕が広州から13時間くらい電車に乗った話をすると、

そのコは片道27時間電車に乗り、そのあと6時間バスに

乗って、年2回ほど田舎に帰るという。

しかも電車は席が取れないらしい。

27時間立ち席??

24時間テレビのディレクターも腰を抜かす過酷さだ。

そういえば、中国ではまとまった休みが旧正月くらい

と聞いたことがあるから、民族大移動みたいな感じだろうか。

人混みの中、合計片道33時間。。。

想像するだけで頭が痛くなりそうだ。

 

僕が最初のピックアップだったらしく、その後、2組の若い

アメリカ人夫婦、1人のアメリカ人、そしてオーストラリア人

老夫婦が車に乗ってきた。

 

しばらくまともな会話ができていなかった僕は、

日本語を聞いたような不思議な安堵感に包まれた。

 

僕は昔、オーストラリアに四ヶ月ほどいた話をすると、

老夫婦は嬉しそうな顔をして、自分たちはキャンベラから

きたといった。キャンベラといえば、確か

オーストラリア政府があるところだった気がする。

老夫婦は二人とも、広州で英語教師をしているという。

婦人は大学で教育学を専攻していたらしいが、旦那は

全くそういった類の勉強はしたことがないらしい。

英語さえ話せればいいのさ、と気さくに笑っている。

僕も日本語教師になれるかな、と冗談でいったら、

英語もずいぶんうまいじゃない、とお世辞をいわれた。

 

1人で参加しているアメリカ人は、45歳くらいで、

大きな瞳と厚い唇で、どこか爬虫類を連想させる男だった。

その男が、聞いてもいないのに、自分のフィアンセについて

熱っぽく語りだす。

どうやら、そのフィアンセとやらはこの近くに住んでいる

らしい。国籍は?と誰かが聞くと、

I don't know (わからない)

と答えた。

国籍不明のフィアンセ??

なんだそりゃ。。。と僕が半分呆れていると、

なんと今夜初めて会うらしい。

さらにびっくりすることには、そのまだみぬフィアンセに

会うために、はるばるアメリカからやってきたというのだ。

うーん、45にもなって。。。それは。。。どうかな。。。

 

彼は目を輝かせながら、写真を交換したりしながら、

60日間もメールをしあっていたことを僕らに話した。

失礼ながら僕は若干ひいていたが、

そこにいたみんなは、

GREAT !!(すばらしい!!)

とかいって皆大喜びだ。

ここらへんの僕と外人の反応が違いが、いわゆる

異文化コミュニケーションってやつなのかな?かな?

日本人ならだいたいひいてしまうと思う。

 

オーストラリアのご婦人などは、目を輝かせて、

なんてロマンチックなの。。。とまでいいだし、

自分のことのように大喜びだ。

 

そんなにうまくいくだろうか。。。写真とメールだけで

やりとりしていて、実際に会ったらイメージと違う、

という風になりそうな気がする。。。

と野暮ったい、ひねくれものの僕は正直思った。

でも、40過ぎても、情熱を失っていないということは、

幸せなことなのかもしれない。

それに、幸せは本人が味わうものだ。

本人が幸せならば、他人がとやかくいうものではない。

 

アメリカ人の若い夫婦は、クリスとチェルシーという名前で、

二人の子供を連れていた。

まるで幸せを象徴しているかのような家族だった。

夫妻はそのまま映画のセットから出てきたみたいな容姿で、

子供二人は印象派絵画の天使のようにかわいい。

旦那のクリスは広州でインターネット関連の仕事をしている

らしい。

アメリカの不景気(サブプライムローン問題)は、

君の会社にどんな影響があるか、などと聞いてくる。

僕は会社を辞めたという話をしたはずだが、伝わっていなかった

らしい。僕の語学力なんてこんなもんだ。

まあいいか、と思い、自分の会社は輸入商社だから、

円高の恩恵を受けているから今のところ大きな影響はない、

と前の会社の話をした。

 

皆に、バケーションか、といわれて、

どうこたえていいかもわからない僕は、

そうそう、バケーション、と返していた。

 

バケーション、ではない気がする。

でも、バケーションでなければ、

この旅はいったいなんなんだろう。。。?