人生見切り発車

永遠にみつからない自分探しの旅(仮)

過去の見切り発車 海外放浪 1人旅 47 ベトナム編《ダナン ぼったくりバーその後 すきっ歯の家》

 

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見切り発車 ベトナムの闇を垣間見るの巻
ぼったくりバーから脱出し、夜道を
1人歩いていると、二十歳くらいの
バイタクに話しかけられた。
 
ベトナムで初めて乗ってからは、
足替わりにバイクタクシーというものを
気軽に活用していたが、そのバイタクに
ぼったくりバーに届けられて痛い目に
あっただけに、もうさすがにコリゴリだった。
 
いらない、と僕は素っ気なく言って
地図を見た。
 
バイタクは一瞬で諦めたらしく、
またぼんやりと道路を見つめている。
 
どうやら僕を騙したすきっ歯のバイタク
と違い、しつこく勧誘してくる気は
なさそうだ。
 
僕は小さく息をついた。
どのみち、ここがどこなのかも
わからないのに、地図とにらめっこ
していてもホテルにはたどり着けそう
もない。
 
我ながらいい度胸してるよ、
と内心苦笑しながら、そのバイタクが
僕が泊まっているホテルを知っていることを
確認し、2万ドンでそのバイタクに乗った。
 
また変なところに連れていかれたら。。。
という僕の思いは杞憂だったらしく、
ホテル周辺の見慣れた風景が目に入ってくる。
 
僕はホテルの近くでおろしてもらった。
 
僕をぼったくりバーに連れ去った
すきっ歯のバイタクの母親がいる
カフェの店に行くつもりだった。
 
何しろ、酷い目にあった。
殴ってやろうとまでは思わなかったが、
文句くらいは言いたい。
 
胸ぐらをつかみ、
Go to hell
(地獄に落ちろ)
くらいは言ってやりたい。
 
それくらいしてやらねば、
腹の虫がおさまりそうにもなかった。
 
カフェの店内は昼間と同じで、
老婆と少女が、時間が止まっている
かのように同じ場所でたたずんでいる
だけだった。
 
すきっ歯のバイタクは、職業柄、
まだ外で客待ちをしているのかもしれない。
老婆と少女は英語が通じないだろうし、
帰ってくるのを待つのも馬鹿らしい。
 
帰ろう。。。
 
そう思って店のドアに手をかけた
瞬間、僕は、ハッとした。
 
昼間の出来事が僕の脳裏に
フラッシュバックする。
 
バイタクは自宅であるこの店に帰宅
したところ、偶然、さっきまで客引き
してた僕を見つけたといっていた。
 
だが、本当にそうだろうか。
 
実はこっそりと僕のあとをつけていて
僕がこの店に入ると見ると、少し間を
置いて店内に入った。
 
そして、ここが自分の家なんだ、
と嘘をついた。。。?
 
すきっ歯バイタクはベトナム語
この店の老婆になにか親しそうに話し、
ハグをして、僕に対して母親なんだ 
と紹介したが、実際のところ、
それは本当なのだろうか。。。
 
すきっ歯のバイタクの、母親である
はずの老婆は、実はただの知り合い、いや
下手すると知り合いですらないのかも
しれない。。。
 
彼のパフォーマンスは、ただの常套手段
であって、これまで何度も同じ方法で
客引きをしてきたのではないか。
 
ベトナムの闇をか垣間見た気がして、
しばし茫然とした僕を、困ったような
笑みを浮かべた老婆がみつめていた。。。