過去の見切り発車 海外放浪 1人旅 39 ベトナム編《ダナン ぼったくりバーにひっかかる ➀》
レシートとして渡された紙切れには、
445USD
と書かれていた。
たかだかビール一本、キャバ嬢みたいな
コとおしゃべりし、カラオケを数曲
うたっただけで30分しかいなかったのに
約5万円。。。ありえない金額だ。
だが、もうキャバ嬢もすきっ歯のバイタク
もいない。
狭い室内にいるのは小太りのいかつい男と、
痩せた中年のやさぐれた感じの男と、
彫りの深い顔立ちの若い男の3人と
僕だけだ。
レシートには合計金額の他に様々な項目が
書いてあり、それぞれに明細金額が
書いてあるが、ベトナム語でかかれていて
わからない。当然、こちらがわからない
のをわかってわざわざベトナム語
で書いてあるのだろう。
ソファーに座っていた僕の両脇に男が
二人座る。
目の前に立っている、ボスとおぼしき
首に大きなホクロがある
(もっというならそのホクロから数本の
毛が生えていて、不潔な印象を与えた)
小太りの男を椅子から見上げるようにして、
僕は言った。
What ? Are you crazy?
(なにいってんだ、馬鹿か)
小太りの男は、ノーノ―、これが
金額だ、と譲らない。
僕を出迎えたときは優しい色を
たたえていた瞳は、今は爬虫類を思わせる
冷たさを放っている。
僕:Bike taxi said it will cost maximum 20 USD
(バイタクが20ドル以上はかからないといってた)
小太りの男:He is gone
(彼はもういない)
僕: Then, call him!
(だったら電話しろ)
小太りの男: I don't care what he says.
(彼がなんといったとしても俺には関係ない)
僕: I don't care either.
(こっちだって関係ないわ)
そういいながら、僕はすきっ歯のバイタクの
まさかの裏切りに打ちのめされていた。
というか、怒りを感じていた。
いくらなら払うんだ、と小太りの男がいう。
僕が30ドル、とこたえると、
面白いジョークを聞いたかのように、
3人の男たちは声をあげて笑った。
小太りの男は言った。
お前はクレイジーだ。ほかの客は、
800ドルは払う。
そんなわけあるか、と僕は思った。
50ドルだって高いくらいだ。
他の客がいくら払おうと、俺には関係ない、
と僕が返すと、
小太りの男は爬虫類の目をしたまま、
口元だけ緩めて、
Oh, you don’t care...
(ほう、気にしないのか。。。)
と余裕げに笑った。
《続く。。。》