人生見切り発車

永遠にみつからない自分探しの旅(仮)

過去の見切り発車 海外放浪 1人旅 36 ベトナム編《ダナン すきっ歯のバイタク》

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ダナンの海岸

 

ホテルにチェックインした後、荷物を置いて

いつものとおり街を徘徊する。

 

数メートルも歩かないうちに、バイタクに

話しかけられる。

今度のバイタクは、30歳くらいの男で、

すきっ歯で四角い顔をしている。

目が充血していて、少し赤いのが印象的だ。

 

目的地もなく散歩しているのに、バイタク

に用はない。ノーノ―といってふりきった。

 

ホテルの真横に川が流れていて、

TOSHIBAと書いたビルが見えた。

 

そのビルを眺めていると、先ほどのすきっ歯

のバイタクが再び現れる。

 

街を紹介するよ、マーブルマウンテンに

行くよ、ビーチに連れていくよ、とかなり

しつこい。

こうでもしないと客が捕まらないのかも

しれないが、正直相手をするのが面倒だった。

 

ビーチはどこにあるのだ、と聞くと、

マップを出してきて、1ドルだ、という。

まあ、これくらい買ってやってもいいかと

1ドルを渡すと、今度はマップのどこに

行きたいんだ、と食い下がってくる。

 

なるほど、そうきたか。。。

なかなかのやり手だが、相手にしている

僕も正直キツいものがある。

 

1ドルでマップを売るか、マップを売らず

に立ち去るか、どちらかを選べ、

バイクには乗らない、と少し強い口調で

いい、Leave me alone (ほっといてくれ)

とつけくわえると、ようやくバイタクは

去っていった。

 

50mほど川沿いを歩くと、カフェがあった。

カフェといっても、軒下にプラスチックの

椅子と、かろうじてテーブルと呼べるくらい

のシロモノが置いてあるくらいの簡素な店だ。

 

店では、14歳くらいのベトナム人少女が、

ぼんやりと海を眺めていた。

いかにも退屈、といったような、冷めた

表情だった。

 

奥には皺の深い老女が、何をするわけでも

なく、ただぼんやり空間をみつめている。

 

この二人は、毎日こうしてぼんやり

過ごしているのだろうか。。。

 

僕はといえば、

毎日歩きづくめで足が痛かったので、

コーヒーを頼むことにして、

タバコを吸った。

 

これからどこに行こうか、と考えていると、

先ほど振り切ったはずの、すきっ歯の

バイタクがバイクから降りて店内に

やってくる。

 

さすがにうんざりした顔をした僕に、

彼はソーリーソーリー(ごめんごめん)

、実はここが家なんだ、

このお婆ちゃんは母親なんだ、

と英語でいって、そのあと、

ベトナム語で何か言い、老女をハグした。

 

ほんとかよ、なんて狭い世界だ、

と僕は思わず笑ってしまう。

 

彼は気をよくしたのか、僕の隣に座り、

世間話を始めた。

なんだか、だんだん憎めないやつに

思えてくる。

 

ビーチはここから何キロくらいなんだ、

と僕が聞くと、バイタクは4キロくらいだ、

と答える。

 

しょうがないか、、、と思い、バイタク

ならいくらだ、と聞くと4万ドンという。

 

節約のために帰りは歩くことにするか、

(といっても片道100円ちょっとの話だが)

と思い、片道でいいから2万ドンで

連れてってくれ、と言って

バイタクに乗った。