人生見切り発車

永遠にみつからない自分探しの旅(仮)

過去の見切り発車 海外放浪 1人旅 46 ベトナム編《ダナン ぼったくりバーにひっかかる⑧》

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見切り発車 まさかの展開に驚くの巻

 

 

 

 

Are you sure, is that all??

(本当に、これで全部か?)

 

小太りの男が、低いくぐもったような

声で同じセリフをもう一度言った。

 

Are you crazy?

(何をいっているんだ)

Look, this is empty.

(ほら、からっぽだろ)

そういって、空の財布を見せる。

 

なぜ、この男は同じ質問を繰り返すのか、

僕にはさっぱりだった。

だが、いずれにしろ、大金が入っている

エストポーチは死守しなければならない。

たとえ、どうなってもだ。

 

不意に、男が壁に向かってつぶやく

ように言った。

you go.

(行け)

 

僕は心の中で、What??(なんだって?)

とつぶやいていた。

だが小太りの男は、壁の方に視線を向けた

ままだ。

他の男2人も、おいおい、それでいいのか

といった納得のいかない表情を浮かべていた。

だが、反論はしない。やはり、小太りの男が

ボスなのだろう。

 

この後、どうやってウエストポーチを

死守しようか考えていた僕にとって、

まったく予想もしなかったセリフだった。

 

警察に行く、といった僕の言葉が思いのほか

効いたのか、それとも出ていこうとした

瞬間、後ろからビール瓶で殴ろうとでも

思っているのか。。。

 

だが、ためらっている場合ではなかった。

ここに残るメリットは、僕にはない。

 

僕は警戒しながら、ドアをでた。

階段手前に別の部屋があり、その中に

いた老婆と目があった。

まったくもって、ここがぼったくりバー

とは思えなかった。

 

階段を降りきって、外に出た。

追ってくる気配はない。そもそも

追うくらいなら行けとはいうはずが

ないのだが、それでも何度も後ろを

確かめながら僕は、ぼったくりバーから

できるだけ離れた。

 

もう大丈夫だと確信したころ、

僕は安堵のため息をついた。

なんとか2500万ドン(13万円くらい)

は取られずに済んだ。

 

念のため財布を見ると、空だと思っていた

中身は、7万ドンだけ残っていた。

なんと親切なことだ、と僕は苦々しく思った。

帰りのバイタク分は残っているではないか。

 

あるいは、本当に全部の金をとれば、

ホテルにすら戻れないため、警察に行くしかない

と奴らは思っていたのかもしれない。

そう思わずにいられないくらい、男たちは

場慣れしていた。

 

それにしても、ここは一体どこなのだろう。

見当もつかず、僕は街灯すらほとんどない

暗い夜道を、再び歩き始めた。。。