過去の見切り発車 海外放浪 1人旅 41 ベトナム編《ダナン ぼったくりバーにひっかかる③》
へえ、50ドルしか払わないのか?
僕の隣に座っていた痩せた男は
そういって、ビール瓶を握る仕草を
見せた。
いつでもこれで殴ってやるぞ、という
ジェスチャーだ。
あれで殴られて、まともに戦えるのは
トム・クルーズくらいのものだろう。
もし殴られた時、瓶が綺麗に割れた方が
痛くないのかな。。。
畜生、と僕は心の中でつぶやく。
こいつらも憎いが、それ以上にあの
すきっ歯のバイタクが憎くてしょうがない。
偶然とはいえ母親まで紹介され、ビーチまで
バイタクで連れて行ってもらい、
金は帰る時でいいよ、と笑顔でうけおって
僕が帰る時間まで忠実に待機していた
あのバイタクが殺したいほど憎い。
その日会ったばかりの他人であるバイタクを
完全に信じてしまった自分自身も憎かった。
Call police (警察を呼べ)
と僕は言った。
とにかく、弱気を見せたらだめだ。
なぜなら今の僕には、445ドルどころか
まさかの2500万ドン
(ドルでいうと1500ドルくらい)
を持っている状態なのだから。
OK, Call police (いいだろう、警察を呼ぶか)
小太りの男がいい、
But if I do, you will pay more
(だが、そうすればもっと払うことになるぞ)
とつけくわえた。
I don't care, call them!!
(いいから呼べ!)
そう返しながら、小太りの男のセリフは
案外ウソではないかもしれない、と
僕は思っていた。
忘れてはならないことは、ここは
日本ではないということだ。
インドにバックパッカーで旅行してきた
友人が、インドの警察は拳銃や警察バッジ
ですら、金次第で売る、といっていた。
ベトナムの警察組織が信用に値するか
どうかの予備知識が僕には全くない。
下手したら、グルになってもおかしくない。
だが、ここまできたら弱気になるわけには
いかない。
弱みをみせたら、身ぐるみすべて
はがされてもおかしくはない。
警察を呼べといったセリフが、最終的に
吉とでるか、凶とでるか。。。
僕には想像もつかなかった。
《続く》