人生見切り発車

永遠にみつからない自分探しの旅(仮)

過去の見切り発車 海外放浪 1人旅 118 ラオス編 《出会いと別れの繰り返し》

 

 

 

パクセーは都会だった。いや、都会に感じた。

何しろ、これまでホントに何もない島々を

渡ってきた僕には、バスが到着するやいなや

バイタクの群れができ、信号が変わるや

いなやバイタクの群れが砂埃をあげながら

一斉にスタートするこの街は、

もう充分に都会だった。

 

バスで一緒だった、端正な顔立ちの

ベルギー男性が、川はどっちだろう、と

僕に聞く。

こっちらしいよ、とさっき現地の女の子

に聞いた僕はこたえる。

 

一緒に川沿いを目指すかい、とベルギー人

に聞かれ、おや、君は観光客嫌いじゃ

なかったっけ。。。と思ったが一緒に

歩くことにする。

 

あるいは、僕は観光客という

くくりに入らないのだろうか??

 

だが、川にはついたものの、対岸への

橋が一本見えるだけで、あとは高級そうな

ホテルがあるだけだ。

 

ここはどこなんだろう、街の中心はどっち

だろう、と思っていると、ベルギー人が

おもむろに、ロンリープラネットをとりだす。

 

またでた!ロンリー!

 

だが、地図を見ても、ここがどこなのか

わからない。仕方なく、バイタクらしき

おじさんに聞いてみると、中心地は

2kmくらい先らしい。

 

さすがにバックパックを背負っての2km

はきついので、サイドカーのついている

最新式(笑)バイタクに

ベルギー人とのることとした。

 

町の中心らしきところにつくと、

バイタク代をベルギー人と5000キップ

ずつ割り勘する。

 

僕はなぜか、決して悪い人ではなさそうな

このベルギー人と一緒に宿探しをする気が

おきなくて、インターネットカフェ

値段を聞いたりしていた。

 

ベルギー人は何度かこちらを振り返ったが

やがて諦めたらしく、細い路地を

入っていった。

 

僕はメインストリートらしき道沿いのホテル

をあたってみたが、15ドル、12ドルと

とんでもない値段。

いや、別にとんでもなくはないのだが、

いままでは2ドルとか3ドルの宿で

過ごしてきたからそう思えるのだ。

 

僕はこの先50m、という看板をみつけ、

ベルギー人がさっき入っていた小道を

歩いてみる。すると、ベルギー人が

こっちに戻ってきた。

 

いくらだった、と聞いてみると、6ドル

だった。高くて手がでないよ、と

ベルギー人はいう。

僕はそうか、とうなずいた。

 

たかだか600円前後で何をいっている

んだ、と思われるかもしれないが、

無職で長期旅行をしていると、

宿代は本当に馬鹿にならない。

 

仮に、

1日500円高い宿に毎日泊れば、

月に15000円のプラスとなり、

1年旅するとなると18万円違う。

 

長期旅行者は

みな、旅をしながらお金が入って

くるわけではないので、どうしても

かかってしまう宿と食事は、できる

かぎり節約したいのだ。

 

僕は、自分が聞いてきた宿は12ドルとか

だったよ、と返事をしながら、6ドルなら

まあ仕方ないかな、と考えた。

 

すると、ベルギー人が、よかったら

ルームシェアをしないか、と提案してきた。

 

これには、僕はびっくりした。

観光客の多いところは嫌だ、といって

Dondetという観光地は避けてきたほどの

男が、ルームシェアをしたいとは。

 

僕は少し考えて、

I am sorry, I prefer single

(ごめん、オレはシングルがいいんだ)

とこたえた。

 

すると、ベルギー人は人懐っこい笑みを

浮かべて、

いや、いいんだ。

といって、行ってしまった。

 

ベルギー人の後姿を目で追いながら、

僕は、ちょっと悪いことをしたかな、と

思ったが、もう遅い。

 

僕が1人部屋にしたかったのは、貴重品の

心配をしながら寝るのが嫌だったからだ。

もちろん、さっきのひとのよさそうな

ベルギー人が盗みをするなんて、

ほとんどありそうもないことなのだが、

何しろまだ知り合って数時間くらいの

ヒトだ。

盗まれることはないんだろうけれど、

神経質な自分は可能性があるだけで、

ストレスになってしまう。

 

とはいえ、

もしかしたら、僕はいい旅の思い出を作る

チャンスを、逃してしまったのかも、

とも思いつつ、

また、自分は人と深く付き合うことに

疲れをおぼえてきているのかもしれない、

とも思う。

 

どこからきた、

どこへ行く、

どこへ行った、

これからどうする。。。

 

明日には別れてしまう相手に対しての、

何千回と繰り返してきたそのやりとりが

億劫になりつつあった。

 

旅自体に、僕は疲れてきてしまっているの

かもしれないな、と思いつつ、

6ドルという宿へ向かって僕は歩き出した。