人生見切り発車

永遠にみつからない自分探しの旅(仮)

過去の見切り発車 海外放浪 一人旅 5 中国編《夜行電車での思わぬ出来事》

 

 

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やっと電車に乗れる。。。


南宁行電車の出発時刻が近づき、ホームにつながる鉄製の

扉が開場されるころには、待合室はマンモス校の全校生徒が

一堂に会するくらいの混雑ぶりだった。

 

電車に乗って、席に着くと僕はようやく一息がつけた。

どうやら、南宁にはつけそうだな。。。

 

乗車券に車両番号他、数字とアルファベットが書いてあり、

どうやら席も指定だと思うのだが、

なぜか通路に立っている人が多いのかが理解できない。

 

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犯罪の匂いが隠し切れない車内w

 

その通路の人混みのなかを、ときおり車両販売のカーゴが

ブルドーザーのように突き抜けていく。

 

それにしても、いつになったら南宁に着くのだろう。

中国で買ってみた地図を見る限りは、東京から岡山くらい

ありそうだ。

しかもこの電車は新幹線どころか快速でもなく、

各駅停車のようにしか思えないし、ときおり何もない

ところでしばらく停車したりする。

 

大声がして、僕は目を覚ました。

いつの間にか眠っていたらしい。

視線を声の方に向けると、制服姿の乗務員らしき人間がなにやら

叫んでいる。乗車券を確認しているのかと思いきや、

どうやらこいつも物売りらしい。

ジャパネットタカタの社長くらいの勢いで、

通路のど真ん中でいろいろな製品をPRしている。

鉛筆削りらしきものやら、靴ベラまで、製品ラインナップは

半端ない。

床も見えないくらいの満員電車で、靴ベラに興味を示す

人間は皆無だった。

それでもときには買う人がいるから、やっているのだろう。。。

不思議すぎる。

 

出発してから、4時間くらいたった。

トイレがもともと老人並みに近い僕はピークも限界も過ぎていた。

ああ、トイレにいきたい。。。

 

なぜ今まで我慢していたのかというと、

トイレそのものが車両にあるのかもわからないという

こともあったが、トイレに行っている間に席を

取られでもしたら、下手したらあと半日くらい通路で

生活をしなければならない、という恐れがあったからだ。

 

だが、それでも生理現象には勝てず、僕は紙にわずかに

知っている中国語を書いた。

 

洗手間

 

確か、これがトイレという意味のはずだ。

だが、そのメモ紙を見せた男は、中国語で僕に何かいってきた。

もちろん、わかるわけがない。

 

すると、4人席の向かいに座っている女性が、声をかけてきた。

「日本人ですか?」

こんなに驚くことはない。(相手も僕が中国人だと思ってたらしいが)

4時間も電車に乗ってたのに、全く気づかなかった。

まさか目の前の女性が日本語を話せるなんて。

トイレの神様にでも祈りたい気分だった。

 

その女性に席をキープしてもらい、僕はようやくトイレに

行くことができた。

 

席に戻った僕は、玉さんという先ほどの女性と、何時間も話し続けた。

玉さん曰く、普段この電車はガラガラなのだが、

米国のサブプライムローン問題の煽りを受けて中国も不況となり、

失業者が急増した。

職を失って故郷に帰る人が多いから、この電車が混んでいるんだ、

ということだった。

 

そういわれてみると、乗客の表情もなんだか全体的に

暗い感じがする。僕もまさかのタイミングで電車にのったものだ。

 

玉さんは、壮族という単一民族の出身らしい。

単一民族と聞くと、草原でヤギでも飼いながら生活してそうだが、

そういうわけでもないようだ。

 

玉さんは、昔東京と千葉のはざまらへんにある、小岩という

ところに住んでいたらしい。

小岩といえば、僕の家から電車で三十分と離れていない。

東京は人が多いから当たり前かもしれないが、

僕は偶然てすごいな、と思った。

 

玉さんは、今朝、まさに反対方向の電車で朝六時に広州につき、

これから南宁に戻るのだという。

24時間働く日本のサラリーマンもびっくりな多忙ぶりだ。

仕事は子供服の関係らしいが、途中何をいっているのか

あまり理解ができなかった。

 

玉さんはいう。

「中国人は B 型が多いから、自己中が多いのよ」

「なるほど、僕もB 型だから、すごくよくわかるよ」

僕がそういうと、玉さんはキャッキャと子供みたいに笑った。

 

広州を出たのが、午後4時過ぎ。

南宁に着いたのは、翌朝6時だった。