過去の見切り発車 海外放浪 1人旅 70 カンボジア編《ぷのんぺん》
超えると、草をはむはむしてる
白い牛がちらほらと見える。
遠くから、船に乗っている僕らに、
川沿いの高原から子供たち3人が
手を振ってくる。
まるで絵葉書のような光景だった。
船からバスに乗り換え、
プノンペンでバスが到着すると、
たちまちバイタク集団の波が押し寄せて
きた。
ホーチンミンシティまで凄まじくない
ものの、そのせわしなさは僕は
気おくれしたような気持になった。
中国からバスでベトナムに入ったときは、
国境を越えた瞬間の景色の変化に目を
奪われ、心が躍ったが、その時のような
感動はカンボジアに着いても僕自身に
巻き起こってこないことに、自分自身
少し落ち込んだ。
地図をもらい、ひたすら街を歩いた。
川沿いのほうは、道路も広く、
街並みもきれいだった。
だが、やはり、なんというか、
心にせまってくるものがない。
カンボジアにきたのだ、と自分自身
に言い聞かすが、ほとんど何も感じない
自分自身に、僕は少しがっかりした。
夜、食事をすませてホテルのロビー
兼レストランをうろうろしていると、
日本語でびっしりと一心不乱に何か
書き綴っている青年がいた。
話しかけようか、迷った。
そこに居合わせた、気の利くカンボジア
のおっちゃんも話しかけてみなよ、
とよくわからないジェスチャーを
僕にしてくる。
だが、細かい字で何かにとりつかれたように
びっしりとノートに何かを書いている彼に、
僕は話しかけることはできなかった。
旅をしている、1人1人は、それぞれに、
それぞれの事情やストーリー、人生が
あるんだよな、とわけもなく思った。