人生見切り発車

永遠にみつからない自分探しの旅(仮)

過去の見切り発車 海外放浪 1人旅 21 ベトナム編《フィッシングビレッジ 船上で暮らす人々》

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ハロン湾にある街

翌朝、6時に起きて、街をふらつく。

早起きのように聞こえるかもしれないが、

なんてことはない。

一人旅だと夜の時間をどうしても

もてあましてしまうから、寝るのが

小学生並みに早いだけだ。

 

まだ6時を過ぎたくらいなのに、

バッグを背負った子供が、はしゃぎながら

海沿いを駆け回っている。

こんなに早く学校に行くのだろうか。

 

でも確かに、ベトナムの朝は早い。

 

6時半にもなると、ほとんどのカフェ

は既に営業を始めていた。

昨日夜9時くらいまで散歩をしていたが

その頃も店は開いていた。

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海岸沿いの人々

少し散歩して、カフェでコーヒーを飲む。

オープンカフェというと聞こえがいいが、

安っぽいプラスチック製の椅子に

テーブルがあるだけのつくりだ。

コーヒー1杯8000ドン、50円

くらいか。

本場?のベトナムコーヒーである。

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こいつが噂のベトナムコーヒーでっせ、アニキ!

 

細かいのがないので、1ドルで払う。

ベトナムではドルが普通に使えるが、

ドルで払ってもお釣りがくるわけ

ではない。

倍くらいの金を払っていることになるな、

とひとり苦笑した。

 

ホテルに戻り、パンケーキを食べながら、

半年の休暇をとってラオスカンボジア

や中国を回ってきたというオランダ人の

カップルと話す。

 

彼らは中国で、ビザを取るために5日間

パスポートを大使館に預ける羽目に

なったという。

パスポートがないから滞在しているホテル

を変更することもできなかったらしい。

 

中国大使館でビザ申請に75ドルかかる

といわれ、ロンリープラネット

(日本でいう地球の歩き方みたいな

有名なガイドブック)

に30ドルとかいてあるじゃないか、

と詰め寄ると、職員の男はあちこち

どこかに電話をしはじめる。

値段は70、65、と落ちていき、

最後にはスペシャルプライスといわれ

35ドルになったという。

大使館でビザの価格交渉をするのだから、

日本の感覚ではとても信じられない話だ。

 

朝食後、再び船にのる。

一泊二日のツアーだから、いわゆる往路だ。

 

何度見てもハロン湾は見ていて飽きない。

海も島も、写真を切り抜いたかのように

美しい。

 

しばらくして、フィッシングビレッジ、

という場所に着いた、とガイドがいう。

 

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到着した??フィッシングビレッジ

 

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果物売りがたくさんいた

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建物の様子

どこに停泊するのだ、どこが街なのだ、

と聞いてみると、ここが街なのだ、

とガイドは笑顔でいう。

 

え、ここが?!

 

僕は驚きを隠しきれなかった。

確かに近くの島は、切り立った崖しか

見えず、平地すら視界に入ってこない。

 

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青い建物にBANKと書いてある。まさかの銀行らしいw

フィッシングビレッジは大型の船では

回れないため僕らは小舟に乗りかえた。

 

小舟の筏(イカダ)乗りが、果物を

売っている。

 

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果物売り


オレンジ、バナナ、パイナップル、

マンゴーと種類も豊富だ。

彫りが深い、美しいベトナム人女性が

いて、その子供らしき幼児が、

パイナップルが入った袋を観光客に

向けて差し出しながら、叫ぶ。

 

ホイ、パイナッポゥ、

ホイ、パイナッポウ!

 

叫んでいるその子供は、どうみても

3歳くらいにしかみえない。

その子供は押し売りをしている様子ではなく

(そもそも押し売りできる年齢

なのかもわからないが)

ただ何度も、ぼんやりとした視線を1点に

むけながら、同じ単語を機械のように

繰り返しているだけだ。

 

高級そうなカメラを首から下げた白人

観光客が、小舟でバナナを売っている

ベトナム人男性に、ハウマッチ、と聞く。

ベトナム人に30、とかえされ、

白人は「ノーノ―、10!」と譲らない。

ベトナム人は25、と値下げをする。

白人は聞こえないそぶりで、10、

つまり10000ドンを出し、

バナナ一房を受け取っていた。

日本円でいうと、200円を50円

くらいに値切ったわけだ。

 

ツアーに参加しているくらいなんだから

そんくらい払ってやれよ、と僕は

思ったが、それでも金を払って買い物を

しているわけだから何も買わないよりは

ベトナム人のためになっているのだろう

と思いなおす。

 

小舟でフィッシングビレッジを周回

したころ、先ほど白人がバナナを買った

バナナ売りが再び僕らの小舟に近づく。

 

僕はバナナでも買うか、と思い、

ハウマッチ、と聞く。

相手は20、とこたえる。

言い値からして、さっき白人が聞いた

ときより下がっているのが面白い。

あるいは僕の身なりから、

こいつ金なさそうだ、と判断した

のかもしれないが。

 

僕は50(つまり50,000ドン)

を出して、30返せといった。

相手は金を受け取り、バナナを僕に

渡した後、釣りがない、という。

おいおい、いいから釣りを返せと

僕がいうと、

本当にないんだ、といって小額紙幣

しかないといって持っている札束を

僕にみせる。

その代わりに、マンゴーはどうだ、

オレンジはどうだ、といってくる

ではないか。

 

どうしたものか、と考えていると、

僕を乗せた小舟がその場を離れだす。

僕は慌てて、オレンジ!オレンジ!

と叫ぶと、男は急いでオレンジを

袋に包み、はんば投げるような

形で、オレンジを入れた袋を僕に渡した。

 

離れていくバナナ売りを遠めに見ながら、

たぶん釣りはあったんだろうな、

と僕は思う。

だが、腹はたたなかった。

むしろ、なんてたくましいんだ、

と感心すらしていた。

 

船が停泊して、僕らは陸に降り立った。

麦藁帽を逆さにして、物乞いをしている

老人がいる。

ベトナムでは物乞いは珍しい。

僕はあまり考えず、ポケットにあった

小銭をその麦藁帽にいれた。

 

しばらくすると、同じツアーに参加

しているフィリピン人の女性がいった。

ベトナムは乞食が少ないからいい。

みんな貧しいが、なんとかして何かを

売ってがんばっている、努力している」

どうやらただ施しを待っているだけの

乞食をあまりよく思っていないようだ。

 

なるほど、そういう考え方もあるのだ、

と僕は思った。

ベトナムでは確かに物売りが多すぎて

正直、辟易することもあるのだが、

彼らは、生活の糧をえようと日々努力

しているのだ、ということも

忘れてはならないのかもしれない。

 

乞食の自立を促すなら、やはり乞食

にはお金をあげないほうがいいの

だろうか。。。

 

ツアーでは、昼食時になると、

カンボジア人、フィリピン人、韓国人、

そして日本人の僕がひとつのテーブル

となり、それ以外はすべて白人

しかいないテーブルに分かれていた。

 

僕は別に人種主義など持ち合わせて

いないのだが、肌の色が近い人種の

ほうが、とっつきやすいというか、

親しみやすい、と感じることが

正直な話、多いのは事実だ。

 

これは感情の問題ではなく、

人間としての習性や本能に近い

のかもしれない。

 

ホテルに戻り、電車に乗って次の

街に出かける前に、もう一度

ホテル前のフォー屋台にいった。

 

ハウマッチ、と聞くと、

寸胴の前のおば様は、指を2本立てる。

どうやら、20000ドンらしい。

はじめて食べたときは40000、

翌日は30000、そして今日は

20000。

衝撃の価格破壊すぎるではないか。

 

ものは試しに1ドルを渡し、

これでいいか、と聞いてみると、

いやいや、20000ドンだ、と

つきかえしてくる。

1ドルは15000ドンくらい

だから、どうやら20000が

設定値らしい。

3食目にして、ようやく定価が

わかった。

 

100,000ドンをわたし、

お釣りをもらう。

お釣りを数えてみると、

70000ドンしか返して

きてない。

 

常連になりつつあるオレに、

まさかの釣銭詐欺?!

 

なかなかやるなあ、と僕は心の中で

苦笑しながら、この屋台での最後

となるフォーをすすった。