人生見切り発車

永遠にみつからない自分探しの旅(仮)

過去の見切り発車 海外放浪 1人旅 19 ベトナム編(流浪する男)

 

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見切り発車、旅について考えるの巻


ホテルのフロントで、ハロン湾行き現地

ツアーのバス待ちをしていると、

手持無沙汰の様子でぼんやりしている

白人がいたので、ハローと話しかけてみた。

 

彼はミルコという名前らしく、日本にも

いたことがあるらしい。

英会話教師か何かかと聞いてみると、

金がかった色の、薄いあごひげを伸ばした

その男はそのようなもんだ、と薄い笑みを

浮かべた。

 

僕は、英語の教師をしながら世界中を渡り

歩いている人を、日本にいるころから、

多く知っているが、そういう人なのかも

しれない。

 

今度はミルコが僕に、

日本でお前は何をしているんだ、

と聞いてくる。

 

初対面の人ならまず聞いてくる質問だが、

僕はいつも少々答えあぐねてしまう。

 

無職でふらついている自分を正当化も

開き直りも、できかねているからだ。

 

だが、ここは正直に、シュレッダーを

輸入している会社に勤めていたが、

辞めて旅をしていることを僕は告げた。

 

彼は人のよさそうな笑みを浮かべて、

お前はどれくらい旅をするんだ、

と僕に聞く。

僕が決めていないんだ、というと、

なぜか彼の微笑みが深くなった気がした。

 

僕は彼に、質問をした。

君はどれくらい旅をしているのだ、と。

 

彼は、天気の話をするかのように、

あっさりと言った。

7 years. 

えっ。。。僕は思わず言葉を失った。

7years...って、

7年。。。?!

 

どうやら聞き間違えではないらしい。

 

彼は、ベトナムの後は、

ニュージーランドで仕事をするという。

何の仕事か聞くと、サトウキビの

収穫と販売らしい。

その仕事は、ニュージーランド

滞在中に、新聞で見つけたという。

 

彼は笑顔で、2年のビザも取った、

働く予定の会社で取ってくれたんだ

、と僕にパスポートのビザを見せて

くれた。ちなみに、パスポートは

4冊目らしい。

 

すごい、すごすぎる。。。

この世に「旅の達人検定」があると

したら、1級間違いなしだ。

なんなら金粉入りの賞状も

ついてくるかもしれない。

 

もし、ビザ有効期間いっぱいまで

ニュージーランドにいるとすれば、

彼は少なくとも9年間旅を続ける

ことになる。

 

旅を始めてたかだか1週間で、

旅とは、人生とは、などと考えたり、

自分の旅を意味あることにしようと、

東南アジアガイドブックの大陸地図

以外はハサミで切り取ったりしている

自分が、彼と比べると、何か生まれた

ばかりのヒヨコ以下のよう思え、

1カ月くらいで帰らないと、次の仕事が

みつからないんじゃないか、とか考え

てる自分の悩みが、とてもちっぽけに

すら感じる。

 

7年か。。。

その年月の重みを想像しながら、

僕が羨ましい、というと、

彼は言った。

 

Sometimes nice,

sometimes not really.

 

いいときもあるけれど、

そうでもないときもある。

 

彼と別れた後、僕は物思いにふけった。

7年。。。

僕は7年も旅をする自分を想像し、

頭の中で思い描く。

 

そんな生き方もあるのだ。

そんな生き方であれば、もはや

家族も、恐らくよく会う友人も、

いないようなものだろう。

本当に、自分だけの旅。。。

頼れるのも、自分だけだ。

 

僕に、そんな生き方がはたして

できるのだろうか。。。

 

そう思いながら、僕は彼の言った

セリフを口に出して呟いてみる。

 

Sometimes nice,

Sometimes not really.

 

そういって微笑んだ彼の笑みに、

少し影が見えたのは、

僕の気のせいだっただろうか。